アジアから撤退しようとするアメリカ
①軍事的合理性と現実主義に基づいた日本の安保政策
拙ブログの過去記事で述べた様に私は日本の「北=対露」と「東=対北朝鮮」については、現状も未来も大きな安全保障リスクは起こり得ないと見ています。要するに「方面毎の防衛予算倍増」は不要であることを論証しました。では「沖縄・尖閣」はどうか?
■10年前奇妙な人が書いた奇妙な本
私も購入して「つん読」状態でしたが初版が2013年4月2日です。安倍晋三が再登板して4か月後の出版ですが随分とセンセーショナルなタイトルですが予言通りになったのでしょうか?
「沖縄が中国になる日」
恵 隆之介(著)
■トンデモお騒がせ本だったのか?
著者の主張によると2015年に中国は核ミサイルを搭載した原潜の開発に成功するから、アメリカの第七艦隊は沖縄に接近すらできなくなってしまうので、後は人民解放軍が一気に沖縄本島に上陸して沖縄は中国領になると言う予言でした。著者の予定から8年経過しても現実は全く違っていますね。
著者は2012年の民主党政権末期頃から「チャンネル桜」によく出演するようになり、一気に顔と名前を売った人物ですが10年以上経過してWikipedia等を見ると、少なくとも沖縄の言論界では少数派で有り虚言癖等で評判の芳しく無い人の様ですね。
■「安倍真理教」の教義の「中国の脅威」と矛盾する在沖米軍の動き
画像は沖縄駐留アメリカ海兵隊のグアム移転 防衛省HPより
日米間で既に合意済ですが今沖縄にいる海兵隊を9千人、ハワイかグアムに移転させる、即ち沖縄防衛の軍事力を減らすことが決まっているのです。グアムには4千人以上移転させる計画で2024年から移転開始です。
■激怒もののアメリカ政府と米軍の厚かましさ
沖縄からグアムに移転する海兵隊員4千人超の兵舎とその家族の住居、軍属の住居の建設費を日本政府に負担させています。即ち我々の血税から支出させていることです。「出ていって基地負担減らしてやるから金出せ」と言う事です。
しかも、グアムでの建築工事を日本のゼネコンに発注するならまだましですが、アメリカ政官界と癒着したベクテル社などのゼネコンが請け負うので、、受注利益の一部が法人税で日本の財政に還流することも有りません。
■海兵隊移転後の在沖米軍の実態
図表は在日米軍が2011年に報告したもの(民主党政権の開示請求によるものでこれが最後)を沖縄県が2020年に公表したものです。
在沖米軍は全員でたった2万5843人。その内約60%が海兵隊員で1万5365人いますがこれから9千人も減らすのです。残りはたったの6365人です。
★在沖縄米軍はたったこれだけの人数で本当に「中国の脅威なるもの」から沖縄を守る気が有るのでしょうか?
■アメリカ政権とペンタゴンが在沖縄米軍を大削減する意図は何か?
① 中国が尖閣及び沖縄本島に侵攻する可能性は極めて低い
② アメリカ帝国の国力の総合的な衰えが著しい
③ ハワイ以西の西太平洋の「権益」を手放す。
私は②が原因で→①→③だと見ています。
■尖閣諸島防衛は日米安保の適用地域と言う「大嘘」
昨年亡くなられた日本のスパイマスター菅沼光弘公安調査庁元第二部長が著書で非常に重要な事を述べています。
「元公安調査庁2部長が教える 統一教会問題 本当の核心 安部元首相はなぜ撃たれたか」
菅沼光弘(著)
「海兵隊は島嶼防衛はやらないと言うことに決まったので自衛隊に自分でやってくれ」と。なかなかの好著でした。どうでもよい安倍の死因の推測を除けば。
島嶼防衛の「島嶼(とうしょ)」とはおおざっぱに言うと非常に小さい島ですから、「非常に狭小でかつ無人島」の尖閣がドンピシャ適用されます。韓国が領有を主張している竹島(リアンクール岩礁)も同じです。
安倍・菅政権時代に日本人の尖閣への船での接近や上陸、定住を絶対に認めなかったのは、民主党政権の負の遺産ではなく中国でもなくアメリカと在日米軍で、「安倍・菅政権」は抗議すらしなかったのです。
2023/01/10
【ワシントン共同】
米、沖縄に即応部隊を創設へ 海兵沿岸連隊、離島防衛に備え
バイデン米政権は沖縄県に駐留する海兵隊を数年以内に改編し、離島防衛に備えて小規模で即応性のある「海兵沿岸連隊(MLR)」を創設する方針を固めた。
11日に日米の外務・防衛担当閣僚がワシントンで開く安全保障協議委員会(2プラス2)で議題になる見通し。
日米関係筋が9日明らかにした。
南シナ海や東シナ海で海洋進出を強める中国への抑止力を高め、周辺地域で有事の対処力を強化する狙い。
沖縄では、新たな基地負担につながるとして反発が強まる可能性がある。
海兵隊は昨年3月、ハワイの部隊を改編し、MLRを創設したと発表した。
(転載ここまで)
※https://nordot.app/985353284948688896
■アメリカ建国史上初の「大軍制改革」海兵隊廃止へ
驚きましたね~アメリカ帝国が最早長くないことを自ら露呈しましたね。アメリカを世界の覇権帝国にするのに最も貢献した海兵隊を「解体・消滅」させるなんて。
★アメリカがもっともらしい綺麗ごとを言う時は劣勢の時
1973年ニクソン政権はベトナム戦争に勝ち目が無くなり敗北を認め撤退する為に「南ベトナムのベトナム化」と言う大義名分を掲げました。米軍は撤退して傀儡政権の南ベトナムを見捨てると言う事でした。アメリカが作った傀儡政権である南ベトナム政府には「まあせいぜい自分達で頑張れよ」と言うメッセージです。
■まさにすべるギャグ並の「海兵沿岸連隊」
海兵隊を改編(解体)→小規模で即応性のある舞台とは。
その心は、「小規模で」=「戦闘力を落とし」、
「即応性のある」=「人民解放軍を見たら自分達だけ素早く逃げる」部隊です(爆)
中国の軍事的脅威が声高に叫び始められた民主党政権末期以降10年以上も沖縄本島と尖閣が無事なのは、在沖米軍の存在ではなく日中双方を隔てる東シナ海の広大さと日本の海自の連合艦隊以来の海軍力と対潜哨戒機による中国政府に対するプレッシャーのお陰です。
■戦後70年以上核を持たない日本を怖れている中国
【北京時事】
2023年01月16日19時53分
「軍国主義の危険性」 日米首脳会談に反発―中国
中国外務省の汪文斌副報道局長(EPA時事)
汪報道局長「日本はかつて軍国主義の誤った道に入り込んだ」
「日本は緊張を誇張して軍備増強の口実を探しておりアジア太平洋地域にNATOを引き込もうとまでしている」と述べた。
https://www.jiji.com/jc/article?k=2023011600894&g=int
(転載ここまで)
日本は核を持たず憲法9条の足枷もあるのに「核保有国」の中国が何を怖れているのでしょうか?
「あんたに言われたくない」の世界です。
■ロシアまで「核無し日本」を怖れている
2023/1/18
ロシア外相「日本が再び軍国化」 対抗措置を警告
ロシアのラブロフ外相は18日、モスクワで年頭記者会見を開き、米欧諸国がアジア太平洋地域でロシアと中国を軍事的に封じ込めようとしており、「日本もその一翼を担っている」と主張した。日本の防衛費増額などを念頭に「日本は再び軍国化を進めている。そのために邪魔な憲法の改正を行うだろう」と持説を述べた上で、日本の防衛力増強にロシアは対抗措置をとると警告した。
https://www.sankei.com/article/20230118-2HYPP732KJMH7I6OBVHRUXXLYA/
転載以上
この様に、アメリカと拮抗する核大国の中露がまだ核すら持たない日本にビビるようでは、少なくとも、対露、対中の防衛予算倍増は必要ないと思います。
■アメリカはいつでも在韓米軍を完全撤退できる法整備は終わっている
トランプは世界中に展開する米軍(特に日韓の対米貿易黒字国の駐留米軍)の完全撤収を考えていました。2年前、米下院を撃の法案が通過しました。
東亜日報 日本語版のWeb記事
2021年9月1日
米下院、国防権限法案から「在韓米軍縮小の制限」を削除
米下院軍事委員会の2022会計年度国防権限法案で在韓米軍の縮小を制限する条項が4年ぶりに削除された。
アフガニスタンからの米軍撤退と時期がかみ合い、今後ドイツや韓国などの影響への国内の警戒心が強まるとみられる。
https://www.donga.com/jp/article/all/20210901/2893975/1
(転載ここまで)
東亜日報による驚愕の記事でした。奇しくも20年以上続いたアフガン戦争に敗れて米軍とアメリカ大使館の職員全員が命からがらカブールの大使館の屋上から軍用ヘリで逃げ出してから半月後でした。
陥落三日前8月12日 既に国土、主要都市の99%をタリバンに奪回され包囲されて陸の孤島と化していた首都カブールと米軍でしたが、今のソウルの現状はタリバンに包囲されいつでも逃げる準備ができている2021年8月15日の「カブール状態」です。
■もはやこれ以下は無い最低水準まで削減された在韓米軍
約28,500人規模の兵力内訳は陸軍20,000人空軍8,000人海軍300人海兵隊100人特殊作戦軍100人。保守派の李明博の時代まで「これ以上減らさないでくれ」と言う韓国側の要求で「歯止め」が有ったのですが、文在寅の従北親中外交で信用を失ったのです。
■2022年大統領選の時から在韓米軍の撤退を想定していた尹大統領
韓国大統領選候補として論戦を繰り広げた尹候補)と沈候補。この時「問題発言」が飛び出した。
ハンギョレ新聞 日本語版Web記事
2022年2月26日
この日の討論で沈候補が「有事の際に韓半島に日本が介入するよう許容することだが、それをするのか」と質問すると、尹候補は「有事の際に(筆者注;自衛隊が)入ってくることもあり得るが、必ずしもそれを前提にするわけではない」と答えた。
(転載ここまで)
この回答が韓国国内で波紋を呼んだ理由は歴代の韓国政府は「韓米日同盟」ではなく「韓米日安保協力」という用語を公式的に使ってきました。韓米と日米は同盟だが、韓日関係が同盟ではないためです。米国と日本は、中国を牽制するために韓米日3カ国同盟を望むが、韓国政府の基本的な立場は、日本とも協力して韓米日協力を継続して堅固に維持するというものが飽くまでも「公式的な見解」だったからです。
尹大統領は「有事の際」=「北朝鮮軍の南下侵攻」の際に、「前提ではないが」状況の悪化によっては日本の陸海の自衛隊に、朝鮮半島に入って共同作戦なり、軍事支援を受ける「可能性を排除しない」と言う彼なりの「安保政策の理論」を言ったものですが
デタラメを言ったわけではなく安倍が2015年に強行採決した「集団的安全保障の容認」と「安保法制」の成立で日本側としても「日米安保条約」を解消しない限り、また日本国内に在日米軍基地と在日米軍がある限り起きて欲しくはないが、日本側として「想定せざるを得ない」ことです。きっかけは何でもよい、安倍が国会で説明した様に米軍の艦船が、日本海なり、朝鮮海峡でも航行中に北朝鮮からミサイル攻撃を受けるような事態が発生したら、「存立危機事態」が発生するので、陸海空の自衛隊は米軍を支援する為に「参戦」しなくてはなりません。
これが「集団的自衛権の容認」ですが、広島G7が開催され、ウクライナのゼレンスキー大統領まで参加して受け入れた以上は「拡大解釈」されてNATO並みの「集団安全保障条約」と同質だとされたら、「集団的自衛権」を越えて「集団的攻撃義務」が生じるのです。
★日本に「NATO日本事務所」なんか設置されたら「集団的参戦義務」から逃れられなくなります。
■有事の際の「指揮権」の所在確認が重要
日本はシビリアンコントロール(文民統制)ですから、「有事の際」の陸海空自衛隊の「指揮権」=「最高指揮官」は時の総理大臣となりますが安倍が戦後一貫した「憲法の政府解釈」特に1981年の鈴木善幸内閣の「憲法は集団的自衛権を有しない」と言う「政府の憲法解釈」を「集団的自衛権を容認する」と変更して閣議決定し、その「政府解釈の変更を前提」とした「安保法制」を成立させてしまった以上、指揮権の所在は安倍以前と変わってしまいます。
例えば、韓国の場合は朝鮮戦争以来、「有事指揮権」は韓国大統領ではなく在韓米軍司令官にあります。ですから「朝鮮半島有事=北朝鮮との休戦状態の解消(再開戦)」の際は陸海空の韓国軍は在韓米軍司令官の指揮下に入ります。そして在韓米軍司令官はペンタゴン(国防省)と時の国防長官、ひいてはアメリカ大統領の指揮下にありますから「アメリカの国益に沿う軍事作戦」に従って韓国軍は「死地に赴く」しかありません。
仮に朝鮮半島やその近海(日本海、朝鮮海峡等)でアメリカ海軍と北朝鮮軍との「軍事衝突」が起きても「集団的自衛権に関する1981年の政府解釈」を堅持していれば、その時の総理大臣は、アメリカ大統領の自衛隊参戦要請に対して「日本は憲法上制約があり個別的自衛権しか有しませんから」と毅然として拒否できたのです。現行憲法特に「9条(交戦権の否定であって個別的自衛権の否定ではない)を盾にとって」堂々と拒否できたのです。
現に昭和時代の総理の佐藤栄作と田中角栄は米国民主党政権のリンドン・ジョンソン大統領やロバートケネディ司法長官からの、執拗な「ベトナム戦争参戦」を憲法を盾にとって拒否しています。
ジョンソンは佐藤に「ベトナム参戦」を執拗に求めたが、佐藤が求めた独自核武装は決して認めようとしなかった。海上自衛隊を出動させるにせよ、アメリカの艦船に対する「燃料補給」とか在日米海軍の作戦行動を支援するべく「機雷の撤去(これは実際に朝鮮戦争の時にやらされた)」ぐらいで済むわけです。
しかし、今後は「朝鮮半島有事」でも「台湾海峡有事」でも「自衛隊に対する有事指揮権」が日本国首相に有るのか、在日米軍司令官のいずれにあると解釈・判断されるかで明暗が分かれます。日本国首相に有れば、困難ですが拒否できないことも有りませんが、在日米軍司令官に有れば、「総理・防衛大臣・国会」も素通りして直接、制服組のトップの統合幕僚長に具体的な「作戦命令」が出されて、海上自衛隊の支援の下、陸上自衛隊は朝鮮半島南部に上陸させられて、韓国軍と共同作戦を取らされ、航空自衛隊も韓国空軍と共同して朝鮮半島上空の「制空権の争奪戦」や北朝鮮空軍との空中戦を余儀なくされるでしょう。
その際の客観的な判断の根拠が
① 日本は「実質的な独立国」なのか?
② 独立国としてもアメリカと対等な関係なのか?
この2点が現段階でどう日米間で決められているかによります。
ただ危惧されるのは拙ブログの過去記事の「サンフランシスコ講和条約の闇」で検証した様に、「外交権」を認められていない以上独立国では有りません。実態としては「属国」や「衛星国」以下の「自治領」です。アメリカの自治領のプエルトリコ 厳密には自治連邦区でアメリカには編入されていないので一見独立国に見えますが、自治領なのです。
国際世論を決めると言われる日本以外のG6の西側大国もサンフランシスコ講和条約の英語の原文を読めばそう解釈するでしょう。特に韓国の尹大統領は前職が韓国の検事総長なので「国際法の知識」は豊富にあったはずですから、2015年の日本の「安保法制」と日本が「独立」した時のサンフランシスコ講和条約を読めば
安倍が行った「集団的自衛権の容認」と「安保法制」をセットにすれば、「朝鮮半島有事」の際に、陸海空の自衛隊三軍が「自動参戦」せざるを得ない「法の建付け」だと言う事はプロの法律家にはすぐわかるはずです。
ですから2015年当時の韓国(朴槿恵政権)の左翼(反日従北親中)勢力は皮肉を言えば「慰安婦」や「軍艦等」などの「歴史戦」に時間とエネルギーを投じるのではなく、日本のリベラル左派と呼応して「安保法制」を外交問題にして阻止すべきでした。
■在日米軍司令官への「有事指揮権」委譲の密約がある可能性は高い
日本の近代史と日米関係を精査すると後からわかるのは、時の日本の政権との重要な「密約」がいくつか見られます。
★アメリカは「世界戦略の変更」の時に「密約」を結びたがる傾向がある
お陰様で好評を博している既刊の拙著「四柱推命と歴史③ 暗殺史」でも詳述しましたが
① 日韓併合の前提としての1905年の「桂・タフト密約」
この時の「アメリカの世界戦略の変更」は兼ねて狙っていた中国東北部(満州)への進出(植民地化)を断念したことでした。
日本が「第0次世界大戦」と言われた「総力戦(国力の全てをかけて戦う戦争)」の日露戦争で「世界最強の陸軍国」の帝政ロシアに余りにも勝ち過ぎて、おまけに明石元二郎大将らの「諜報工作」で「第一次ロシア革命」まで起こさせてしまいました。危険を感じたセオドア・ルーズベルト大統領は朝鮮半島を日本に完全に任せて、ロシアの南下をフルストップ(完全停止)させて逆に日本の領域拡大の意思を朝鮮半島経由で中国大陸に釘付けにさせる。そうすればアメリカが10年もフィリピン独立軍と戦ってやっと手にしたフィリピン植民地に日本が関心を抱かなくなる。いわば「満州進出の断念」と「日本の南下阻止」という「世界戦略の変更」でした。
②「沖縄返還密約」
1972年の沖縄の本土復帰に際して、1971年、第3次佐藤内閣はリチャード・ニクソンアメリカ合衆国大統領との沖縄返還協定に際し、公式発表では地権者に対する土地原状回復費400万米ドル(1440億円;1ドル=360円換算)をアメリカ合衆国連邦政府が支払うとしていたが、実際には日本国政府が肩代わりしてアメリカ合衆国に支払うという密約をしていた。それまでの世界史に、戦勝国が敗戦国から奪った領土を返還した実例がありませんでした。
「沖縄方式」これは私の造語ですが、
★沖縄と言う「領土」は返すが「基地」は引き続き使用させる。奪われた領土を返してもらえば、その国と国民は喜ぶ。日本に対して「良い顔」できます。今でも日本国民に大手メディアがアンケートを取れば「アメリカに親近感を感じる」と言う国民が80%もいるのは、世代によって違いますが恐らく「沖縄返還」が大きな理由だと思います。代わりに北方四島さえ返還しないソ連以来のロシアに親近感を抱く国民は、アメリカと対照的に非常に少ないです。
■名を捨てて実を取る
「令和のマッカーサー エマニュエル駐日米大使」のアメリカ統治時代のキャラウェイ沖縄高等弁務官の所で述べた通り、軍人出身のキャラウェイは本国の沖縄返還に反対でした。理由は「軍人特有」のもので「大量のアメリカ兵の血を流して、やっと取った領土を返してたまるか」と言う感情です。
沖縄戦は
兵力比
日本軍 14万6千人
米軍 54万8千人で1対4
日本軍は玉砕(ほぼ全滅)しましたがアメリカ側は、総大将のバックナー中将は日本兵に狙撃されて戦死。日本軍は彼を識別しており、彼が視察に来ると日本の銃撃が激しくなるので米兵たちは嫌がった。
戦死者
2万195人
(これは並行して行われた欧州での対独戦で最大の被害を受けたバルジの戦いの1万9千人を上回る最大のもの)
戦傷者
5万5千162人(米軍としては第二次大戦中最大)
戦闘ストレス傷病者(日本軍の強靭な抵抗で精神障害を被ったもの)
2万6千211人
合計した人的損失は投入兵力の約39%、ほぼ4割と言う甚大なものでした。
軍事学では一回の軍事作戦で兵力の30%を失うと「軍団」としての機能を失うと言います。要するに継戦能力を失うのが常識です。沖縄本島とは言え比較的小さいエリアを、圧倒的な兵力比と火力物量作戦で攻めて完全に制圧するのに丸々三か月もかかり投入した軍団は、次の本土進攻作戦で使えなくなるほどの被害を受けました。
マクロ的には太平洋の戦場の作戦を優位に進めていても、本土に近づけば近づくほど、人的損害率が急上昇する日本軍の鬼気迫る勇猛さににトルーマン大統領は本土進攻作戦に慎重になり、日本に降伏を決意させる為に広島と長崎に二発の原爆を落としましたが、大本営と昭和天皇がポツダム宣言の受諾(国体護持と言う条件付き停戦)を決断した直接の原因は日ソ中立条約を一方的に破棄したソ連に背後を突かれたことでした。
歴史に名高い硫黄島の戦いはクリント・イーストウッドによって映画化されましたが、
★沖縄戦をハリウッドが映画化しようとしないのは、兵力が少なく、装備も圧倒的に劣る日本軍と沖縄県民の鬼気迫る抵抗で「発狂した米兵(帰国後自殺者も多い)」が多く、格好悪くとても「ヒーロー化」できないからでしょう。
日本は大日本帝国が解体されて、自衛のみの自衛隊になって75年たちますが、その75年間の殆どをアメリカ帝国は世界中で戦争を続けています。その為、現役の職業軍人のみならず引退した軍人からなる「在郷軍人会」の政府に対する発言力は強いです。
沖縄返還の決定はアメリカ国務省VSペンタゴンの覇権争いで、ジョセフ・グルー以降の国務省の「知日派」と駐日アメリカ大使の勝利でした。しかし国務省としても100%善意でもなく、返還すれば「沖縄の統治費用=行政経費」の負担は無くなると言うメリットがあります。
その代わり、ペンタゴンに対しては、返還後も今まで通り沖縄の基地を自由に使えるし、不平等条約の最たるものの「日米地位協定」で米軍人の犯罪は逮捕、処罰が困難で日本の警察の米軍基地内への捜査はできない一種の「治外法権」となっています。
「沖縄返還」とはアメリカが建国以来戦った国で最もてこずり逆に甚大な損害を被った相手に領土返還と言う「名誉」を与え、味方に引き入れ地政学上の重要な拠点として末永く活用すると言う大きな「世界戦略の変更」でした。
「桂・タフト密約」「沖縄返還密約」ともに桂太郎、佐藤栄作と言う長州人(山口県人)の総理大臣でした。長州出身の総理大臣の特徴は「清濁併せ呑む」と岸信介流の「目的は手段を浄化する」です。岸の孫の安倍晋三が結んだ「安保法制」に「密約」が無いと考える方が不自然です。
■集団的自衛権の容認と安保法制で自衛隊をウクライナに送ることも可能
アメリカ軍の作戦の為に日本の自衛隊が「地球の裏側」まで送られるかもしれない。これは安倍を弟の様に可愛がった亀井静香が著書で心配していたことですがその危惧が実現化する可能性が高くなってきました。
その地ならしが
① 緊急事態条項の成立
② NATO日本事務所の解説です
ロシア側の発表ではウクライナ戦争での捕虜の中にアメリカのアフガン帰還兵が相当いるとのことでした。除隊したのか退役したのかはわかりませんが、彼らを「広義のアメリカ兵」と解釈すれば、「同盟国米軍と共に戦う」と言う「集団的自衛権」が在日米軍司令官から発動できます。
■アメリカが第二次朝鮮戦争のトリガーを引くのは在韓米軍とその家族が完全撤退した後だろう
この時必ず2015年安倍が強行採決した「安保法制」と「日米の密約」が効いてきます。安倍は国会で日本の武力行使の引き鉄となる「存立危機事態」の定義で北朝鮮による米艦へのミサイル攻撃を説明していました。
昨秋から数回に及ぶ、「北の刈り上げ(金正恩)」をビビらせている米韓軍事演習で、金正恩が追い詰められ我慢の限界を超えて中露の援軍無しに自爆暴発南下した時は、在韓米軍はきっともぬけの殻でしょう。冗談ではないです(怒)






