ウクライナ紛争のその後とモルドバへの影響

ウクライナ紛争のその後とモルドバへの影響

 

筆者注;この記事はツィッターで4月20日につぶやいたことをベースにしています。従って「紛争」の現状とは一か月の開きがあります。

 

大規模作戦が再開され今度は戦闘が長引くかもしれない

私は拙著「危機と体制転換の壬寅の年② ウクライナ紛争」でウクライナ全土の戦闘は3月末で収束すると予想しました。

予想はほぼ的中してロシア軍は首都のキーウや第二の都市のハリコフから撤退して現在は南部の要衝のマリウポリの攻囲戦に限定されています。

私が早期終結を予想した根拠はウクライナ、ロシア、ベラルーシ3国の道路の舗装状況と3月→4月の気温の上昇で雪解けした道路が泥濘化してロシア軍の戦車機甲師団が作戦展開できなくなるだろうという予想によるものでした。

しかし、再度情報を収集してみると「道路状況」については「予測」を変える必要があるのかなと思い始めました。

 

私の「予測」の盲点はロシア国内の幹線道路の「舗装化率」の状況がわからない事

ロシア語が読めませんから、書斎をひっくり返してロシア関係の統計情報の本を探したら「予測の変更」の根拠たりうるものが見つかったのです。

 

ちょっと古いが貴重な情報が書いて有る

2012年7月31日初版ですから10年前です。そのP126に「道路インフラ整備計画」の所に「2010年~2015年の輸送戦略」に「高速道路M4(モスクワ環状線~ボロネジ州)1900kmの高速道路建設計画」があると書いて有ります。

モスクワ環状線とはWikiに「モスクワ旧市街を囲む都市高速鉄道である」とあります。日本で言えば東京の「環八」のような幹線道路でしょうか。図はモスクワ環状線。中央にクレムリンがある。

 

ロシア軍の第二次作戦の侵攻ルートを予想すると

地図上は私が線引きしたルートとなるはずです。

 

赤線のモスクワ~ヴォロネジルートは既に完成している可能性が高い

予定では2015年完成となっており既に7年たっています。2014年のクリミヤ侵攻以降西側の経済制裁を受けていますが安倍元総理がプーチンにプレゼントした3000億円があります。

 

第二次作戦の戦略目標は「ドンバス地域」の完全制圧と切り離し

ドンバス(ドネツク、ルハンスク2州)へ戦車機甲師団が進撃するルートは私が黒で線引きしたルートです。

舗装化されているかは皆目わかりませんが、少なくともM4(モスクワ~ヴォロネジ)高速道路が完成していれば侵攻は早くなります。

 

マリウポリの後オデッサが陥落したら小国モルドバが先にギブアップする

モルドバ(面積は九州とほぼ同じ)はモルドバワインで有名で外貨を稼ぐ唯一最大の産品です。

オデッサがロシア軍の手に陥落したら「内陸国」となるのはウクライナだけではなくモルドバも同じです。

 

オデッサは人間の体で言えばウクライナ、モルドバ2国の「肺」に相当する

2国が窒息させられるわけです。既にモルドバでは国民生活が限界に近付きつつある。

モルドバは内陸国なので冬は寒いです。ウクライナ侵攻以降、天然ガスの価格が高騰して、月のガス使用料金の支払でモルドバ国民の一か月の平均給与が吹き飛ぶ状態だそうです。

マリウポリの陥落は時間の問題と言われていますが、ウクライナと西側はオデッサだけは何が何でも死守しなくてはなりません。

 

5月22日現在マリウポリ陥落

のようですね。この「紛争(戦争)」は西側のBBC、CNNの報道とロシアの国営放送の報道内容が一致しないとマリウポリのような「戦略的要衝」の攻防戦の帰趨は確認できません。

アゾフスタリ製鉄所の地下基地に籠城していたアゾフ大隊の連中はみな無条件降伏してロシア軍の捕虜になったようですね。

ロシア側はウクライナで捕虜になっているドンバス地区の「政治的有力者」との捕虜交換に応じると言っていますから「人道的」だと思います。

https://www.yomiuri.co.jp/world/20220521-OYT1T50181/

マリウポリ「完全解放」のロシア軍、東部ドンバス地方に転戦…制圧に向け攻撃強化

2022/05/21 22:45

【キーウ(キエフ)=上地洋実】

ロシア国防省は20日夜、ウクライナ南東部マリウポリのアゾフスタリ製鉄所を完全に掌握したと発表した。

同省は製鉄所に籠城していたウクライナの武装組織「アゾフ大隊」の司令官も「投降」したとしており、ロシアはマリウポリ全域を事実上制圧した。

露国防省によると、セルゲイ・ショイグ国防相が20日、プーチン大統領に「製鉄所とマリウポリをウクライナの兵士から完全に『解放』した」と報告した。

露側の発表に先立ち、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は20日、製鉄所からの兵士の退避が数時間以内に完了すると明らかにしたが、退避の完了は公表されていない。

露国防省はこれまでに、ウクライナ軍やアゾフ大隊の兵士2439人を東部の親露派武装集団の支配地域に移送したと発表している。

ウクライナ政府は露軍兵士との捕虜交換で帰還の実現を目指すが、交渉は難航している。

一方、ロシアが2014年に併合したクリミア半島と東部の親露派支配地域を結ぶ要衝マリウポリの攻略を終え、

露軍は製鉄所に投入していた部隊も東部ドンバス地方(ドネツク、ルハンスク両州)に転戦させ、制圧に向けた攻撃をさらに強化するとみられる。

 

プーチン優先順位一位の「戦略目標」達成

キエフ攻略は「主作戦」であったのか「陽動作戦」だったのか「真相」はプーチンとそのごく少数の側近しか知りません。

ロシア国民に対して「陽動作戦だった」と言い切れば軍事的失敗では無かった事になります。

また「ウクライナからネオナチを排除する」と言っていましたからそれが「アゾフ大隊」であることは明らかで、今回投降して捕虜になったのがその「主力部隊」であれば、「戦争ではなく特殊軍事作戦だ」と言う主張もその通りになります。

 

オデッサの現状

ニュースソースをスクラップし損ないましたが、オデッサ港はロシアの黒海艦隊に海上封鎖されているみたいです。

おまけに、黒海艦隊を排除しても、沖合に大量の機雷が撒かれているようでオデッサ港は事実上「輸出港としての港湾機能」が停止している状態です。

この為、ウクライナ産の小麦(世界需要の20%)とモルドバ産のワインの輸出がストップしています。

ウクライナ産の小麦に依存している中東、エジプト、アフリカ諸国には「食糧危機」が迫っています。

グテ―レス国連事務総長が「ロシアは食糧を人質にしている」と非難していましたが、地上軍を派遣せずに「オデッサ港とオデッサと言う都市」を無力化し、さらに「食糧」をバーゲニングパワー(交渉力)にするのは兵士を犠牲にせずに最大の果実を引き出すじつにあざといやり方だと思います。

西側、特にアメリカ、イギリスとそのメディアのBBCやCNNは「戦果を誇大」に報道しているように思えます。

フェイクニュースや印象操作を無視して、着実に戦果を積み上げているのは今のところロシアだと思います。

 

再び試されるアメリカの誠意と信頼性

私が何度も警告したように

①マリウポリ陥落→アゾフ海の「内海化」

②オデッサ港の「港湾機能の無効化」

が完了すれば、ウクライナとモルドバは「内陸国」となって窒息します。

既に国外の安全地帯に避難していると思われるゼレンスキーは国民の支持を失って政権が倒れて「親露政権」が誕生する怖れが有ります。

今、アメリカが「覇権大国」として西側の信頼を保とうと思えば、艦隊を黒海に送り込んで、ロシアの黒海艦隊と交戦してデもオデッサ港の封鎖を解くしかありません。

それが出来なければ「背に腹は代えられない」ので食糧危機を抱える中東、アフリカ諸国はこぞってロシアになびくでしょう。

そして、その時に「覇権大国としてのアメリカ」の「終わり」が始まります。

アメリカは行動で示すしかありません。

 

 

以上

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