イタリアとEU
イタリアの代々の政権に根強い「反EU」気質
2009年10月に発覚したギリシャの国家財政の「粉飾決算」に端を発した主にEUの南欧各国のソブリン危機(各国国債の信用不安)です。
スペイン、ポルトガルなどユーロ加盟諸国(PIIGS)、あるいはハンガリーやラトビアなど中東欧諸国へ波及した場合、世界的な金融危機に発展するかもしれないと懸念されました。
この時イタリアもEU当局、主にドイツから疑われて欧州の「財務規律」として厳しい緊縮財政を指示されて、企業の倒産や失業が増加しました。
経済危機の原因は、そもそもEU結成当時から存在した独仏ら北欧諸国と南欧諸国の経済成長のズレと言う「構造問題」が拡大したことに起因します。
ただこの時、EU最大の経済大国のドイツの「女帝」のメルケルに厳しく叩かれたことが「トラウマ」となりそれが10年以上、政権が何度交代しても「反EU」=反ドイツ=反ブリュッセルの気運として続いているのです。
対立しても最終的にはEUとは妥協点を探る
メローニが「大幅減税」をすれば当然、財政状態が悪化してEU当局(独仏、ブリュッセル)に睨まれます。しかし最後は「妥協点」を見出して落ち着くはずです。
「反EU」は「国民心理」を意識したファイティングポーズに過ぎません。
イギリスの様に「本格離脱」してしまうのは歴史的に欧州大陸の西端の島国として「孤立的独自外交」を維持してきた伝統と国民投票の予想が外れてしまったという「大きな弾み」があってのことです。
EU全体の「枠組み」に対しては大きな衝撃にはならない
連立を組む3党の党首それぞれ「EU各国のコンセンサス(合意)」とは相反する主張があり、しかもEU加盟国、G7構成国初の極右連立政権、初の女性首相と言うことで「グローバリズムの終焉」を予想する声も有りますが、それは今年2月のプーチンのウクライナ侵攻で既に「不可逆的」に始まっており、メローニ政権の成立が更に加速化すると言うことにはならないと思います。
移民問題は深刻
しかし移民問題≒難民問題(2015年の中東・アフリカ系の欧州難民危機)は深刻です。この問題は各EU加盟国に共通する問題ですが、その後のコロナと長期化するウクライナ紛争で陰に隠れていますが、それらが落ち着けば再び「顕在化」する事は自明の問題です。
その意味でメローニが正式に首相になり、長期政権化すればEU内に「不協和音と軋轢」を産んでEUのタガを緩めるリスクはあるでしょう。
記事トップの画像は欧州の移民問題