≪ケーススタディ:アメリカGE社のIOT化≫
同社は、航空機エンジンで世界トップシェアです。そして航空機エンジンにも「センサー」を組み込みIOTを活用しています。
ボーイング787に搭載されている、最新鋭エンジンには26個の「小型センサー」が組み込まれています。
そこから、何と、毎秒5千種類のデータが取得できます。
このデータで飛行機の状態がリアルタイムで把握できます。飛行中の航空機エンジンの損傷や摩耗を予測し、寿命を正確に知ることができる。
従来は「オイル交換」は飛行距離から割り出していましたが、一機ごとにデータを収集することにより、的確な時期を読み、無駄をなくすことに成功しました。
≪欠航便の減少や「燃費」「整備時間」の節減で10億円単位のコスト削減が可能になった≫
★製造業のビジネスモデルの転換を意味します。
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≪航空会社のコスト削減サービスを提供できるようになった≫
≪膨大なデータを解析するソフトウェアが不可欠≫
GEのソフトウェアセンターはサンフランシスコ郊外に有ります。
2011年にゼロからスタート、4年間で社員が1200人に膨れ上がりました。
★グーグルやフェイスブックから転職した技術者もいて、SNSを作っていた技術者が、航空機エンジンの部品を作るようになったわけです。
≪日本での実例:新潟の水田のケース≫
台風の大雨の中、農家の高齢者が激流に巻き込まれる惨事が起きるのは何故か?
★「田植え」が終わった後の稲作農家の「キモの仕事」は何か、病害虫の駆除もありましょうが、第一は「水田の「水位」の管理」です。
大雨の際は、水路の門の開閉で、水量を調整しなければなりません。放置して水量が増えてしまったら、自分の水田の稲だけでなく他の田んぼの稲もだめになってしまう。
まさに命がけで、高齢者は大雨の中、見回りに出るのです。
★農業就業者が少なくなって農地の集約化が進めば、「見回り」の負担はますます重くなります。
≪新潟市はNTTドコモと組んで「革新的稲作営農管理システム」の実証プロジェクトに取組中≫
★「田んぼの水位をミリ単位で計測するセンサー」の設置。取得されたデータはクラウドサーバを経由し、農家のスマホやPCに伝えられ、農民は
わざわざ、水田まで見回りに出かけなくとも、家に居ながらにして水位を把握できます。
≪センサーは水圧を測る1.5メートルのポールと接続する水圧測定器からなる≫
設置はポールを水田に突き刺すだけです。ポールにはSIMカードが内蔵され、ドコモの携帯電話網でデータ送信されます。
「水位」「水温」「気温」「湿度」が稲の生育にとって「危険域」に達したら画面が「赤」に代わって警告を発信します。
≪新潟市はアベノミクスの三本の矢のうちの、一本である「国家戦略特区」に選ばれている≫
「水田のIOT管理」も農業の成長産業化を目指したものです。
2015年5月から、新潟市の水田460ヘクタールに300か所にポールを設置して実証実験を行いました。
≪おいしいコメ作りのために・・・農業機械メーカーのクボタもIOTで参入≫
農業機械にセンサーを搭載し、膨大なデータを集めて徹底的に分析します。
KSAS(クボタスマートアグリシステム)と呼ばれます。データの解析により、「最小限の作業量」で「適度の肥料」をまいて美味しいコメを沢山収穫できるようにします。
★肥料は多すぎても少なすぎても駄目。美味しいコメかどうかは「タンパク質含有量」できまります。
美味しいコメのタンパク含有率は5.0~6.5の間です。タンパク含有率が多いほどお米は美味しくなくなってきます。
肥料を増やせば「タンパク含有率」は高まり、減らせば低くなります。
★データを解析すれば、適度の肥料量を割り出せます。
★KSASを導入した結果2014年の「美味しいお米」の収穫量は2011年比で15%アップしたそうです。
≪建設現場の「スマートコンストラクション」・・・建設機械大手コマツの参入≫
2001年に参入しましたが、現在では「熟練工」しかできなかった難作業もIOTで可能になりました。
例えば工事現場では地面の凹凸をならさねばなりません。従来は人手による測量でやってました。
その測量図を元に、「施工計画」が作成され、熟練した作業員が、油圧ショベルやブルドーザーを操って地面をならしていました。
しかし、「建機のオペレータの高齢化」や「人手不足」の問題が顕在化して、2020年の東京オリンピック、パラリンピックの準備が懸念されています。
コマツは「ドローン」を飛ばして施工現場をデジタルカメラで空撮し「自動測量するシステム」を開発しました。
★測量データは、コマツのクラウドシステムに送信・解析され「三次元の測量図面」が作成されます。
この「測量図面」と「完成図面」を重ね合わせれば、その違いで、土を削ったり、盛ったりする箇所がわかります。
これを基に、施工計画を作成、通信機能を持った建機に送信され、建機は自動制御で、施工計画に沿って作業を行います。
かなりの熟練者でなければできなかった難作業や高精度の施行も未熟練者でも可能となりました。
作業の進捗状況や結果は建機からクラウドシステムに戻されデータとして蓄積されます。
★「スマートコンストラクション」は工期の現場によっては、半分以下に短縮した実績が有ります。
★2015年2月に導入されて以来、千を超える現場で使われています。
≪全世界から集められた「ビッグデータ」はコマツの経営判断にも役立った≫
2004年、コマツの建機の需要が落ち込みます。経営陣はどう経営判断を下すべきか迫られます。
その時役だったのは、全世界39万台から集められたビッグデータです。
中国の建設現場から送られてきたデータを解析すると、確かに各地で稼働率が落ちています。
そこで、中国国内の工場に減産を指示して、「過剰在庫」を抱えずに済みました。
≪ヘルスケア業界とIOT≫
家や自動車などとヘルスケア機器がお互いにデータをやり取りするようになってきます。
オムロンは、血圧計や、体重計などで測定したデータをスマホ上に集約できるアプリを開発しました。狙いは集約したデータと「外部データ」を連携させること。
データを「オープン化」すれば、健康器具で得られたデータから健康状態を判断します。室内の温度調整を自動的に行う健康管理サービスも想定できます。
コンテンツ配信の企業で携帯電話向けサービス事業のエムティーアイがIOT関連の製品を開発しました。
女性向けに「生理日予測サービス」を展開しており、そのヘルスケアデータを蓄積し、活動量計や、体重計、血糖測定器といったIOT製品を開発してきました。
現在も指輪を通して、脈拍を測定、メンタル状態をつかめる製品を開発中です。
高齢化が進み健康志向が高まっているこの分野では未だビジネスチャンスが有りそうです。しかも家電の様な高価な商品ではなくて、身につけられる簡単な装置で事足りるからです。
★ヘルスケアに関しては保険業界も熱視線を送っています。
保険業界は、これまで年齢と性別から、保険料を算出してきましたが、IOTによってより詳細なリスク算定と保険料の提案が可能になるでしょう。
≪IOTの落とし穴・・・「サイバー攻撃」≫
サイバー戦争では、相手国の企業に侵入してハイテクを盗むなどのスパイ行為から単なるデータ破壊行為もあります。
アメリカでは「サイバー戦争」用の部隊「アメリカサイバー軍」が組織されました。
また、2011年、ロバート・ゲーツ国防長官が「外国によるサイバー攻撃」は戦争行為とみなす」と表明しています。
中国からのサイバー攻撃で、アメリカ企業の企業秘密盗まれる例が目立っています。
2015年7月、サイバーテロがIOTに向けられたと想定する動画がアップされ、大きな反響を呼びました。
「参考文献」
日台IOT同盟・・・李登輝、浜田宏一、講談社