外交 日米関係が大きくリセットされる
バイデン大統領 日米の同盟関係を否定
日露戦争との因縁
1月3日、バイデン大統領は日本製鉄によるUSスティールの買収計画について「米国の安全保障を損なう恐れがある」と言って拒否しました。相手が1901年創立のアメリカを代表する製鉄会社です。
1901年と言えば日本が大英帝国と日英同盟を結んで日露戦争の準備に入った年でした。
ちょうど同年の1901年に奇しくも日本も官営八幡製鉄所の操業を始めました(岩手県釜石製鉄所は1887年創業)。歴史の因縁としか言いようがないでしょう。
USスティール
画像出典は日テレニュース深層 放映時期は今回の大統領選の始まる直前
USスティールはNYのエンパイアステートビル(1931年)や第二次大戦のノルマンディー上陸作戦を成功させた大量の上陸用舟艇を製造したアメリカ帝国を象徴する大名門企業です。
画像はエンパイアステートビル(左)とノルマンディー上陸作戦で使用された上陸用舟艇(乗込むのは米軍)
大日本帝国を終戦(ポツダム宣言受諾)に追い込んだUSスティールの粗鋼生産量
最盛時の粗鋼生産量が3500万トン(1953年;朝鮮戦争)で従業員数が34万人です。
ある意味日米戦争はUSスティールの圧倒的な粗鋼生産量に敗れたとも言えるでしょう。
大日本帝国海軍を叩き潰したUSスティールの鉄鋼生産能力による兵器
戦略爆撃で日本中の都市を焼き払ったB29爆撃機、沖縄戦で海を覆いつくした空母、戦艦群、ゼロ戦と互角以上の格闘をして苦しめたF6Fヘルキャット戦闘機
アメリカ帝国の衰退を象徴するUSスティールの歴史
粗鋼生産量;3500万トン→1400万トン
従業員数;34万人→2.1万人
粗鋼生産量が60%低下して世界ランキングで27位にまで落ちました(日本製鉄は4位)。
従業員数は94%の減少です。
画像、出典は日テレのニュース深層 1位と3位はともに中国の国有鉄鋼メーカー、2位のアルセロール・ミッタルはルクセンブルグ国籍の鉄鋼メーカー(オランダとの合弁)
衰退の原因は戦後の日米貿易摩擦(1977年の鉄鋼、カラーテレビ)で新日鉄などの日本勢に品質、価格ともに完敗した事と、技術革新を怠り、高炉などの設備の更新が出来なかった事です。
画像はUSスティール最大の生産量を誇るゲーリー工場(インディアナ州、ゲーリー)1906年操業開始、古色蒼然とした老朽化高炉で
巨額の設備投資して最新鋭の高炉に更新しなければ中国勢との競争に勝てないが資金提供を約束している日本製鉄との買収が成功しなければ資金が無く閉鎖も視野に入っている。
鉄鋼業界の日韓併合か?
画像は日本製鉄によるUSスティールの買収を認めようとしないバイデン政権とカマラ・ハリス副大統領(大統領選候補)に抗議のデモをするUSスティールの労組と従業員
かつての敵の日本製鉄に救いを求めたUSスティール
日本製鉄が技術指導した中国の鉄鋼メーカーに更に低価格で輸出攻勢をかけられて2016年にトランプ大統領に就任すると「米中貿易戦争」を宣言し、中国製の鉄鋼の輸入に「25%の制裁関税」を掛けました。関税はバイデン政権にも引き継がれ保護関税に6年間、守られてきましたが、ついに力尽きて「身売り」を表明しました。
米国内粗鋼生産量ランキング1位のニューコア社は電炉メーカー(電気炉で鉄鋼を作る;主原料は鉄くず鉄スクラップ)で高炉メーカー(溶鉱炉で鉄鋼を作る;主原料は鉄鉱石と原料炭)では有りません。 従って米国内ではUSスティールとは競合関係に無く、USスティールと競合しているのはクリーブランド・クリフスです。
画像出典は日テレニュース深層
米国内シェアが2位のクリーブランド・クリフス(USスティールは3位)が買収を申し出ましたが日本製鉄が倍額の2兆2000億円を提示して競り勝ちました。
USスティールの株主は持ち株を2倍の値段で日本製鉄に売れるの文句のつけようが有りません。
USスティールの経営陣、労組、株主が一致して日本製鉄を歓迎
日本製鉄側の提示した条件
USスティールの社名を残す
・経営陣の過半数をアメリカ人にする
・従業員のリストラはやらない
・老朽化した高炉等の設備を最新鋭に更新する
・買収が成立したら従業員全員に特別ボーナスを支給する
日本製鉄がUSスティールの買収に成功したら
粗鋼生産量の世界ランキングが4位から3位にジャンプアップして中国勢と世界市場で渡り合える 画像出典はTBS 時期は大統領選の最中
USスティールは当初、国内ライバル社のクリーブランド・クリフスの買収提案を拒否しています。
理由は提示金額の低さではなく、クリフスのCEOのゴンザルカスは40歳の時にブラジルから米国に移住した(現在66歳)買収を専門とするいわゆるハゲタカ経営者(あだ名は鉄鋼業界のイーロン・マスク)で、買収後は従業員を全員解雇して老朽化した設備も廃棄します。ゴンザルカスの狙いはUSスティールの生産力や設備を買う事ではなく、特許などの知財を奪い、ライバル社を叩き潰して、自社の国内シェアを伸ばし米国内の高炉製鉄メーカーの首位になる事なのです。
ですからメディアでも報道されている様にUSスティールの労組とほぼ全員の従業員はデモまで起こして日本製鉄による買収を認める様にバイデン政権に要求しているのです。
まるで日本製鉄とUSスティールの関係は日露戦争後に、自力で国家を維持することを諦めて、大日本帝国への併合を臨んだ大韓帝国(李氏朝鮮)の純宗と李完用総理にそっくりです。
バイデン前大統領の判断に激怒した橋本英二日本製鉄会長と日本製鉄による買収を諦めないデヴィッド・バリドUSスティールCEO
画像は現実主義政治家として日韓併合を推進した李完用総理と日韓併合条約正本に玉璽を押した純宗皇帝
李完用は晩年「足(国力)が弱ったから(日本に)支えて欲しいと頼んだだけなのになぜ売国奴と非難されるのだろう」と嘆いていた
私は2013年12月に日本製鉄がUSスティールの買収に乗り出した時に、正直「大丈夫かな?」と不安を抱いていました。
理由は昭和のバブル景気の最盛期に、三菱地所がアメリカの象徴であるNYのロックフェラーセンタービルを買収して日本では当時国内で報道されませんでしたがアメリカ国民の強い反感を買ったからです。
画像はロックフェラーセンタービル バブル最盛期の1989年10月三菱地所が買収しNY市民の反感を買いジャパンバッシングの火種となった
しかし当時は詳細を知らなかったこの買収案件がUSスティール側の経営陣、労組、株主が「三位一体」となって歓迎していたことに驚きました。
加えて、USスティールのお膝元であるペンシルバニア州を筆頭に製鉄所の有る他の4州(インディアナ州、ミシガン州、イリノイ州、アラバマ州)の多くの自治体も歓迎していました。
※続きます