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北朝鮮の経済活動➀「盗む」「密貿易」
2020年北朝鮮の瀬取り(せどり)を阻止した絶大な制裁効果
瀬取りとは
洋上において船から船へ船荷を積み替えることを言う。
一般的には親船から小船へ移動の形で行われる。
2018年時点、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の関係者が国連安全保障理事会の課した経済制裁に反し、石油を別の船籍の船に洋上(外洋上)で移し替えて密輸していることが国際問題になっている。
これに対して、各国による監視活動が行われている(後述)。
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国連加盟国は北朝鮮のせどりを禁止
朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)による瀬取り
国連安保理決議2375号(2017年9月採択)により、国連加盟国は北朝鮮籍船舶に対する又は北朝鮮籍船舶からの洋上での船舶間の物資の積替え(いわゆる「瀬取り」)を容易にし、又は関与することが禁止されている。
これは、核・化学及び生物兵器、並びにその運搬手段の拡散を防止するために行われるもので、朝鮮民主主義人民共和国が数々の国連安保理決議に違反したために採択されたものである。
韓国船籍のタンカーが北朝鮮籍のタンカーへ瀬取りをしていた
2018年5月3日 韓国船籍のタンカーが東シナ海の公海上で、北朝鮮船籍のタンカーに近づき横付けしている様子が確認されたが、韓国政府は否定した。
しかし、韓国の港では制裁後も北朝鮮産の石炭が何度も搬入されているのが確認されたため、2018年7月に、アメリカ合衆国連邦政府は韓国大統領文在寅に対して、北朝鮮産石炭の韓国への搬入を幇助して対北朝鮮制裁に穴を開けるのを黙認しないよう警告した。
韓国船籍タンカーによる国連安保理決議違反
韓国タンカー「瀬取り」関与か 石油製品4千トン、北朝鮮に
日本経済新聞 2019/4/3 18:51
【ソウル=恩地洋介】海上で積み荷を移し替える「瀬取り」で北朝鮮船に石油製品を提供した疑いがあるとして、韓国当局が韓国籍タンカーを摘発し捜査を進めていることが3日、分かった。
2017年9月に東シナ海の公海上で4300トンの石油精製品を北朝鮮の船に積み替え、国連安全保障理事会の制裁決議に違反した疑いが持たれている。タンカーは釜山港に係留されている。制裁決議違反の疑いで韓国籍船の出港が禁じられるのは初めてという。
聯合ニュースによると、捜査の発端は米国の通報だった。
国連安保理が北朝鮮への石油輸出を厳しく制限する中、北朝鮮は瀬取りによる密輸を増やしている。
米国は日本とともに海上の監視を徹底、北朝鮮への融和姿勢が目立つ韓国にも協調を求めている。
韓国海洋警察は1月30日に、韓国船籍「Pパイオニア号」の船長とその管理会社を船舶入出港法違反などの疑いで送検した。
17年9月に北朝鮮の船舶2隻に対し、海上で石油製品を提供したとされる。
韓国外務省によると韓国の港には現在、他国船籍を含む計4隻の船舶が瀬取りなどの疑いで留め置かれている。
これらの扱いについて、同省当局者は3日「米国や国連の北朝鮮制裁委員会と緊密に協議している」と述べた。
捜査当局から資料を取り寄せた韓国国会議員によると、18年にも韓国籍の船舶が瀬取りの疑いで捜査を受けたが、証拠不十分で係留措置は解除された。
この船は18年5月から8月にかけて台湾の北300キロの東シナ海上に停泊したことが複数回確認された。
17年以降、27回に渡り計16万トンの石油製品を運んだとみられる。
国連安保理制裁違反の「黒幕」は中国とロシア
2018年7月に、アメリカ合衆国が国連安保理に提出した文書にて、「北朝鮮が国連安保理の制裁に違反して石油製品を違法に密輸入している」として、中華人民共和国とロシア連邦の企業を黒幕に挙げた。
北朝鮮は、2018年1月から5月までに確認出来ただけで、海上で20隻以上の船で計89回にわたって瀬取りを行い、決議で制限された年50万バレルの3倍以上の石油を違法に手に入れたことが発覚している。
スティーブン・ムニューシン財務長官は7月12日の米国連邦議会下院の聴聞会に出席し、「北朝鮮に対する制裁を緩和する計画はなく、むしろその反対。北朝鮮制裁の効果で北朝鮮は交渉テーブルに出てきた」と制裁の効果とその継続を支持した。
瀬取りの効果→米朝会談実現
米朝会談は対北朝鮮国連安保理制裁の効果で北朝鮮は交渉テーブルに出てきた国連安保理の勝利
スティーブン・ムニューシン財務長官
アメリカ合衆国の銀行家、映画プロデューサー、政治家。ゴールドマン・サックスの共同経営者を17年間務め、推計4000万ドルもの純資産を稼いだ 。
2016年11月8日の2016年アメリカ合衆国大統領選挙ではドナルド・トランプ陣営の財務責任者を務めた。
2017年9月21日に北朝鮮と取引する外国の金融機関などの企業や個人をアメリカ経済から排除する権限を財務省に与える大統領令が発動されたことを受けて中国人民銀行幹部と建設的な協議を行ったとして「中国だけでなく、全ての企業・個人が対象である。
アメリカと北朝鮮どちらとビジネスするか選択できるが、両方とは無理だ」と表明した。
各国が瀬取りを監視
ムニューシン財務長官は「対北朝鮮強硬派」であると同時に「米中貿易戦争」のキーマン
※ムニューシンと言う珍しい名前は御先祖がベルギーでダイヤ採掘業に従事するロシア系ユダヤ人だそうです。
「瀬取り」の監視には大韓民国軍も参加している
大韓民国軍が確認した件数として、2017年には60件あまりだったものが、2018年では130件にまで増えた、とされている。
また、米国の国連代表部が北朝鮮制裁委員会に提出した報告書では、2018年1月から5月までの間の瀬取りでは、89回はあったとされている。
意外と知られていない北朝鮮「瀬取り」
監視実態の主体は朝鮮国連軍
国連安保理決議により禁止されている北朝鮮籍船舶の「瀬取り」を含む違法な海上活動に対して、関係各国が緊密に協力し、国連安保理決議の実効性を確保する取組みを行っている。
日本と米国が、「北朝鮮の完全な、検証可能な、かつ、不可逆的な方法での全ての大量破壊兵器およびあらゆる射程の弾道ミサイルの廃棄の実現」に向け、国連安保理決議を完全に履行する必要があると考え、その取組みに参加しているのは当然である。
さらにこの活動は、日米の2か国にとどまらず、積極的な協力を惜しまない他の関係国によって支えられている。
外務省の報道発表によると、これまで北朝鮮の「瀬取り」を含む違法な海上活動に対する航空機・艦艇による警戒監視活動に参加した国は、下記の通りである。
手段参加国
航空機による警戒監視活動:オーストラリア、カナダ、ニュージーランド、フランス
艦艇による警戒監視活動:オーストラリア、カナダ、英国、フランス
合計:以上5か国に日米を加えた7か国
ここで振り返っておきたいのは、1950年6月25日の朝鮮戦争の勃発に伴い、同月27日の国連安保理決議第83号および7月7日の同決議第84号に基づき創設された朝鮮国連軍(以下、国連軍)についてである。
国連軍は、国連の諸決議に従って国連加盟国が自発的に派遣した部隊から構成されたものであり、現在でも朝鮮半島の平和と安全の保持のため重要な役割を果たしている。
その構成国は、下記の18か国である。
国連軍参加国:
オーストラリア、ベルギー、カナダ、コロンビア、デンマーク、フランス、ギリシャ、イタリア、オランダ、
ニュージーランド、ノルウェー、フィリピン、韓国、南アフリカ、タイ、トルコ、英国、米国