巻き添えを食って国家崩壊となった隣国のホンジュラスとエルサルバドル
アメリカ大企業の経済的植民地ホンジュラス
バナナ共和国の風刺画とユナイテッド・フルーツ社
ホンジュラスと言う国は「経済的に完全に対米従属」している非常にわかりやすいアメリカの属国であり経済植民地です。
アメリカのユナイテッド・フルーツ(現チキータブランド)と言う企業がホンジュラスでプランテーションでバナナ農園の大規模経営を行っています。
画像はチキータバナナの商標
別名「バナナ共和国」とも言われバナナ農園は労働集約作業なので隣国のエルサルバドルから大量の出稼ぎ労働者が来ていました。
ホンジュラスのGDPの規模は日本の鳥取県と同じで中南米で最も貧しい国です。
隣国エルサルバドルとの関係は最悪
画像は映画「サルバドル/遥かなる日々」のワンシーン
エルサルバドルは中米で最も発達した工業国(綿製品等)で「中米の日本」とも呼ばれましたが、隣国のホンジュラスとしては自国がエルサルバドルの工業品の輸出市場にされるのが面白くなかったのです。
そこに1970年のサッカーのFIFAワールドカップでの判定に不満を持ち実際に両国間に「サッカー戦争」と言う戦争が起きてしまいました。
これを機会に、ホンジュラスは自国内で働いていたエルサルバドル人の農業労働者30万人を有無を言わせずに強制送還、ただでさえ国土が狭く人口密度が低いエルサルバドルは町に失業者があふれて治安が悪化しました。
そこに隣国ホンジュラスの社会主義革命に刺激されて、失業者や貧しい農民達が「左傾化」して「エルサルバドル内戦」と呼ばれる反政府の武装闘争を始めました。
政府は当然、アメリカ政府に軍事支援を求めてレーガン政権も1980年特殊部隊のグリーンベレーを投入して軍事介入すると言う多くの一般市民を巻き込む泥沼状態の内戦となりました。
この辺りのリアルな状況はオリバーストーンが監督をした映画「サルバドル/遥かなる日々1986年」で有名です。
内戦は国連の仲介で1992年に集結しましたが、12年続きエルサルバドルの国土をすっかり荒廃させた内戦は「思わぬ副産物」をアメリカに輸出することになりました。
トランプが移民排斥の大義名分にするMS13と言うギャング集団とは?
当初は自国民を自警する為の不良集団
画像は全米でMS13が逮捕された地点 ほぼ全米に満遍なく広がっている
https://cis.org/Fact-Sheet/Fact-Sheet-MS13-Arrests-ICE-20052014
MS13の正式名称は「マラ・サルバトルチャ」でエルサルバドル内戦での「反政府農民ゲリラ」を意味します。
カリフォルニア州、ロスアンゼルスのピコ・ユニオン地区にてエルサルバドル内戦後に内戦から逃げる為に難民としてアメリカに移民したエルサルバドル人達の戦争孤児達により、恐らく1970年代後半〜1980年頃に結成された。当初は不良集団でしたが目的はロスアンゼルスにはすでにメキシコ系、アジア系、アフリカ系などの他の人種によるギャング集団がおり、そのギャング集団からエルサルバドル人の移民達を自警する事でした。
1990年までに政情不安定なエルサルバドルとグアテマラからの亡命者がアメリカに増加し多くの若者がメンバーになったとされています。
強制送還されたことによってアメリカと中南米に組織とネットワークを拡大させた
https://www.dlri.co.jp/report/macro/330512.html
出所 第一生命経済研究所
組織メンバーは失業した元兵士の若者や元少年兵も多くいました。1992年のエルサルバドル内戦終結後に多くのメンバーが逮捕されたり、アメリカからエルサルバドル本国に強制送還されたりもしました。
強制送還されたメンバーの多くはエルサルバドル本土を中心に他の中央アメリカ諸国にも進出し組織を拡大させていきました。
組織はエルサルバドルを中心にメキシコ、グアテマラ、ホンジュラス及びその他の中央アメリカ諸国出身者などで占められています。
2017年の時点でアメリカ大陸に3万人の構成員が存在するとされています。
内戦の経験から軍事訓練も受けている
※https://globalnewsview.org/archives/6086
組織メンバーには失業した内戦中、兵士だった若者や元少年兵なども多くおり、内戦終了後も 不安定な政情や内戦の影響での経済の悪化や貧富の格差による貧困や失業などから組織に入る若者が増えているとされています。
現在、マラ・サルバトルチャの構成員はアメリカ及びエルサルバドルだけに留まらずメキシコ、ホンジュラス、グアテマラ、ベリーズ、パナマ、スペインなどでもその存在が確認されておりその活動が活発化してきています。
犯罪組織としての活動は麻薬密輸、ブラックマーケットにおいての銃の不法販売、不法入国、殺人の請負、窃盗などを行い、さらには当局(アメリカ政府、警察組織、各国の政府)に対しても好戦的な活動を行っています。
中南米に強制送還された者が母国の治安を悪化させている
強制送還されたMS13のホンジュラス出身者の構成員が母国で犯罪ネットワークを築き、治安を悪化させ、ホンジュラスの人々は「職と良好な治安」を求めて、地域のコミュニティ単位で約6千人と言う軍隊と見紛うべき大集団となって、メキシコ経由でアメリカに集団移動しているのです。