【回想】バブル景気と私⑤社内預金が支えた日の丸半導体

NECはなぜ高利の「社内預金制度」を活用したのか?

1980年代は「日の丸半導体」が世界を制していましたがアメリカを筆頭に外国にライバル企業はいませんでした。

私が入社した当時は既にかの有名なインテル社はRAM(半導体メモリー)から完全撤退して「CPU特化戦略」を取っていました。

NECを始め「日本勢」にCPUの特許を絶対に公開しませんでした。当時は「せこいな~」と思いましたが、今から振り返ると特許を公開したら、数年で日本勢の製造技術で

インテルのCPUの2倍の処理能力で単価(商品の一個当たりの売価)が四分の一の「日の丸CPU」を量産されて市場から駆逐されていたのは火を見るより明らかなので、「命懸けの真剣勝負」としては賢明な経営戦略でした。

ですからライバルは国内の競合他社、富士通、東芝(その後倒産)、日立、三菱電機、SONYだけでした。私が在籍した頃はまさに「総力戦」と言えるほど国内勢同士の熾烈な競争でした。

「産業のコメ」半導体は製造業にとっては「金食い虫」

NEC広島工場の立ち上げに経理部員として関わりました。PCや様々な家電に不可欠なDRAM(メモリー)の量産工場の製造ラインを作るだけで500億円かかります。

メモリーの集積度(記憶容量と処理能力)の進化が早いので5年経過するとそのラインは使えなくなるのです。

最新の半導体製造ラインは何故5年で陳腐化(使えなくなる)するのか?

半導体産業を呪縛する「ムーアの法則」

半導体の集積度は12か月~18カ月(1年半)で約2倍になる、そして4年で約4倍になります。

開発競争と技術進歩で4年で処理能力が4倍になる。逆に製造コストは四分の一になるから4年後に同一の単価で処理能力が4倍の半導体メモリーが買えるのです。

ですから、わざわざ同じ価格で四分の一の処理能力しかない商品を誰も買いませんよね。従って5年目には従来の処理能力の半導体メモリーを製造していたラインは「無価値な鉄の塊」になるのです。500億円の設備投資がパーになります。

私の記憶ではNEC広島工場(1988年設立)は1M(メガ)DRAMの量産ラインでしたが開発で東芝に先を越されて1990年末に先に4Mを市場に出されてしまい、

NECも広島工場にまた500億円投資して4M用の製造ラインを作らざるを得なくなったはずです。

買い手は世界中なので世界陸上の短距離競争の様に開発競争で先行してスタートダッシュで先に市場に出した方が勝ちです。

ちなみにNEC広島工場は「日の丸半導体」が「世界半導体戦争」に惨敗して、当時の主力六社(うち東芝は倒産)が半導体事業から完全撤退したので今や跡形も有りません。

NECと日立が半導体部門の工場設備と優秀な技術者を「切り出して」共同設立した「最後の日の丸メモリー大手」のエルピーダメモリは倒産しました。

まるで「古戦場」の様で「夏草や兵(つわもの)どもの夢の跡」の世界です。

 

5年毎の設備投資額500億円はどうやって資金調達していたのか?

当時はメインバンクの住友銀行の融資に完全に頼っていました。入社当時、先輩の本社経理マンに教育されたのが「NECは住友銀行に一日1億円の利息を払っている」という事でした。先輩の言いたかった事は銀行借入に頼らない強い財務体質を作る様に経理マンとして肝に銘じて日々働けと言う意味でした。

【支払利息一日1億円の根拠は?】

住友銀行の融資残高が約3650億円ほど有り当時の融資金利が年10%でした。利息の返済だけで年間365億円、一年365日ですから割ると一日に換算して1億円の支払利息が発生すると言う会計上の事実です。

「商業銀行(当時の都市銀行など)」の融資は銀行法で一年以内と決められていますが、利息さえきちんと遅滞なく支払い、銀行から見て成長が見込める企業の事業であれば、返済期日が来れば毎年「借り換え」を繰り返して事実上の長期借入金になります。

そして「旺盛すぎる資金需要」の半導体事業ですから「追加融資」も要請して審査もパスすれば「雪だるま式」に膨らんでいく「事実上の長期借入」が「根雪」の様に巨大化しながら積み上がったであろうことは容易に理解できました。

競合他社も「懐事情」は全く同じで同一財閥グループの都市銀行から借りていたはずです。

東芝は「三井系」なので三井銀行(現三井住友銀行)、三菱電機は三菱銀行(現三菱UFJ銀行)、日立は「芙蓉グループ」なので旧三和銀行(現三菱UFJ銀行)、富士通は富士銀行(現みずほ銀行)等々です。

どの社も地獄の様な開発競争で半導体が「金食い虫」であることに変わりは有りませんからメインバンクから膨大な融資を受けていたことは間違いありません。

半導体開発競争の激化と深刻な資金不足

1980年代の「日の丸半導体」の国内の開発競争はエンドレスな「デスマッチ状態」でした。NECと競合5社の競争は例えば6人の男が同じ風呂に入って首までつかっているとします。

お湯の温度を40度からスタートして45度→50度と5度ずつ上げていく「我慢比べ」に耐えられなくなって風呂から外に飛び出したものが負けです。

3人追い出して例えば最後にNEC、日立、三菱電機の三社だけ残れば半導体市場は「寡占(かせん)状態」になります。

寡占になれば三社で「価格支配力」が握れますから「価格カルテル(販売価格協定;独禁法違反ではないことに注意)」を作り半導体メモリーの最低販売単価に「下限」を儲けてそれまでの販売単価の2倍にする。

そうすれば3社の半導体部門の利益は2倍になって銀行への借入金の返済が進み、ついでに三社で話し合い「もうこんなしんどい開発競争はやめようや」と合意すれば

トヨタを筆頭とする日本の自動車産業の様に日産、ホンダの事実上の3社寡占状態で一台当たりの販売価格を高く維持することができ銀行借入はほぼ不要になります。

 

優秀で根性がありすぎて6社共倒れになった「日の丸半導体」

ところがどこも大東亜戦争の大日本帝国の陸海軍の様に勇敢で根性ありすぎていつまでたってもどこもギブアップしない。

メインバンクも銀行ですから「融資してなんぼ」の業界なので「金食い虫の半導体事業」は大歓迎です。現在のウクライナ戦争の様に半導体開発資金と言う兵器を「湯水の様に」無制限&無期限に提供し続けたのです。

その為、大東亜戦争のガダルカナルの戦いの様な「出口無き消耗戦」の様になってしまったのです。

【銀行融資には厳しい審査がある】

例え付き合いが長い住友銀行もいくら世界的に超有名なメーカーでも融資する際にはNECの財務状態を厳しく審査して当然ながらきっちり担保も取ります。

如何に「同一の旧住友財閥グループ」と言ってもNEC(創業時1899年の社名は住友電気)と住友銀行の「密接な関係」には凄いものがありました。

都市銀行はどこも1970年代から「オンライン化」を推進しましたがその「オンラインシステム(第三次オンラインまで三度にわたる)」を一貫して受注し続けたのはNECだし

住友銀行本店で全国の支店の「オンライン網」の決済処理をする大型コンピューター(ACOSシリーズ)は一貫してNEC製でした。

また住友銀行の全国の支店に設置されるATMは全てNEC製です。

決算は毎年、増収増益で企業成長を続けていても担保として供出する不動産などの資産には限度があります。

それで銀行融資に頼れない資金需要を社内預金で補ったのです。

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